2026年11月 霜月(しもつき)
きのこの話
今年は9月の長雨で、白くて大きなきのこが公園などにもニョキニョキと生えて話題になりました。このきのこは強い毒性を持つ「オオシロカラカサタケ」で、当ゴルフ場のクラブハウス裏にも出現しびっくりしました。
きのこといえば秋の味覚ですが、今は温度、湿度、光量を徹底管理した栽培施設で一年中きのこが生産され、エノキ、シメジ、ブナシメジ、マイタケ、エリンギなどは、季節を問わずに購入でき、旬の味覚のイメージは薄れてしまいました。しかし、きのこの王様「松茸」は栽培ができないので貴重な秋の味覚となります。
きのこはとてもデリケートで、栽培の際にはわずかな汚れでも雑菌が繁殖する原因となり、徹底した衛生管理が必要となります。体育館のように大きな工場は、他の菌が入り込まないよう一つの建屋で一種類のきのこしか作れません。工場で働く人は納豆菌を持ち込まないよう食事にも気を付けるそうです。
生物界は大きく分けると、植物、動物、菌類の3つに区分されます。植物は太陽光線と無機物からブドウ糖やデンプンを合成する生産者で、動物はその植物を食べる消費者です。が、これだけでは地球は植物や動物の死骸でいっぱいになってしまいます。そこで、これらを掃除して再び無機物に分解する役割をもつ菌類が存在します。
きのこはカビと同じく菌類に属します。菌類は自分で自分の体を作ることができないので、きのこは枯れ木や落ち葉などに、カビは家屋の壁やパンなどに寄生して生活しています。菌類の本体は白くて細い糸状の菌糸で、この菌糸で栄養を吸収し、さらに菌糸を伸ばして繁殖していきます。
きのこのうち枯れた樹木に寄生する仲間を木材腐朽菌といい、シイタケ、ヒラタケ、ナメコ、エノキタケ、マイタケ、サルノコシカケなどがこの仲間です。落ち葉や枯れ草に繁殖するものは腐生菌といい、ヒトヨタケ、カラカサタケ、チャワンタケなどがあります。


樹木の根に寄生して栄養をもらい、代わりに水分や養分を樹木に供給し、樹木を病気から守る働きをする菌は菌根菌といい、マツタケ、ホンシメジ、タマゴタケなどがあります。生きた樹木と共生しなければきのこを作ることができないのでマツタケは栽培ができません。
菌類は世界中に約4万5000種ほどあり、このうちきのこの種類は約1万種で、日本では3,000~4,000種のきのこが認められ、そのうち食用になるのは約300種、うち市場に出回るきのこは15~20種類ほどです。

「椎茸」:日本で最も生産量の多いきのこで、本格的に食用にされたのは室町時代です。以来日本料理に欠かせない食材となりました。
「舞茸」:50年ほど前にやっと人工栽培に成功し市販が可能になりました。それまでは「幻のきのこ」といわれ、見つけた人があまりの嬉しさに舞い上がってしまうので「舞茸」と名付けられたそうです。江戸時代には銀の代わりに年貢として納めていた地域もあります。
「エリンギ」:原産はアフリカ北部の地中海沿岸からパキスタン北部で、山地や乾燥地帯に自生するきのこです。エリンギという名前はPleurotus eryngii(プレウロータス エリンギー)という学名からつけられたもの。日本では30年ほど前に栽培に成功して大量生産ができるようになり食卓でお目にかかれるようになりました。
「松茸」:「香りをききわける」という、最も繊細な味覚を愛する日本人が珍重する高級きのこです。赤松や黒松の林に発生します。香りの成分はアルコールの一種で、マツタケオールや桂皮酸メチルというものです。秋の日本料理には欠かせない香りです。
ところで、きのこの名前には松茸や椎茸のように「茸」という字が使われています。「茸」を漢和辞典で調べると「しげる。にこげ(鳥獣の柔らかな毛)。柔らかく敷き詰めたように物の集まるさま。ぐったりとしたさま。きのこの俗称。」と出ています。
しかし、ある文献では「タケは牡陰(たけり)ノ略、かたち似たり」として男性のシンボルと形が似ているとストレートに表現し、椎茸などを「木のタケ」、松茸などを「土のタケ」と呼んでいたという記述があります。タケは元気が良いこと、成長する勢いの良いことを意味し、強壮剤としても使われていました。もともとは「気の凝ったもの」から「きのこ」と呼ばれていたようです。
大昔の人々は研究データもないのに自然ときのこが有する治癒力をわかっていました。なぜならシイタケやアガリクスに多く含まれるβ-グルカン(ベータグルカン:ブドウ糖が連なってできた食物繊維、高分子多糖類)は抗がん作用が期待できる機能を有しています。
動物~植物~菌類という生物界の連鎖の中、人間から一番遠いもの(菌類)を摂取することは非常に良いことなのだそうです。人間は菌類のもつエネルギーをきのこからもらっているのですね。

